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2012年3月29日 22時45分

アーカイブス活動を振り返り・千葉

千葉 裕太朗

3月11日に発生した東日本大震災、当時私は大学生でありその日、住んでいた石巻のアパートで被災しました。津波から避難するため高い建物を探し、10階建てマンションの8階にひとまず避難しました。階段でしばらく津波の様子を見ているとひとりの女性に声をかけていただき、お部屋を使わせていただけることになりました。そのマンションは2階まで波に浸かり、波が退くまでの5日間8階にあるその方のお部屋で避難させていただきました。絶望的な状況の中、見ず知らずの私にお部屋を提供してくださったこと、毎日細かなことにまで気を遣っていただいたこと、心から感謝してもしきれない気持ちでいます。波が退き、移動ができるようになってから私は住んでいたアパートに戻りました。部屋は天井近くまで浸水し泥にまみれていました。できる範囲でひとり、部屋の片づけをし、情報収集をするため市役所へ行きました。そこで石巻から仙台へ向かう臨時バスが運行することを知り、翌日そのバスで仙台へと向かいました。仙台からは再びバスに乗り、山形県へ移動し同郷の知人宅で一週間ほど滞在している間、大船渡で必要とされているものを買い込みました。知人とともに物資を持ちバスに乗って山形から仙台、仙台から一関、一関からはお迎えに来てくださっていた知人のご両親に送っていただき大船渡に帰省しました。翌日避難所をまわり、親族や友人の無事を実際に面と向かって確認し、胸を撫で下ろしたと同時にその親族や友人との思い出がたくさんつまった街が一変した光景を目の当たりにし、言葉を失いました。そのなかでガレキの撤去作業をする友人、津波で流されてしまった自宅の片づけをする友人、避難所で炊き出しや掃除などを手伝う友人、そんな友の姿を見て私は何か自分にもやるべきことがあるのではないのかと考えていました。ちょうどそのタイミングで市役所の知り合いの方から今回の活動についてのお話を紹介していただいたので、迷うことなくやりたいという意思を伝えました。それから間もなくして防災科研 長坂様と面談をし、作文を書き、採用をしていただき、活動を開始しました。ここまでが震災当日からこの活動を開始するまでの流れです。

4人で顔を合わせ、KOM(KOMとは「気仙を大いに盛り上げたい」の頭文字をとった4人のチーム名)として本格的に始動し始めたのは5月初頭からで、初めはeコミマップの操作方法等、後に活用していくであろうPC操作のレクチャーを受けました。その他事務的な手続きを進め、5月下旬に初のインタビューを行いました。

いち早く復興に向けて前進している企業として陸前高田市の醸造会社八木澤商店をピックアップし、会長様と社長様にインタビューしました。事前にお聞きする内容を考え、シミュレーションをして臨みましたが、考えているようにうまく進めていくことができず、インタビューすることの難しさを実感しました。しかし、それ以上に未来に対する熱い想いや本音のお話など貴重なお話をお聞きすることができ、同時にやりがいを感じた記憶があります。後日このインタビューの内容をまとめた記事を作成し、KOMのホームページにアップしたことが私たちの初めてのアーカイブ活動になりました。これを機に始めたインタビュー業務は私たち地元の人間でなければ聞けないことがあり、私たちにだからこそお話してくれることがある、という何か使命感のような気持ちを持って取り組んできました。八木澤商店をはじめ、イベント実行委員の方々、海外からの支援ボランティアであるALL HANDSのみなさん、写真洗浄の支援を行ってくださったRICOHのみなさん、さいがいエフエムの責任者の方、営業を再開した店舗の店主の方々、商店街のみなさん、現在まで多くの方々にインタビューをさせていただきました。みなさん考え方やアクションの起こし方はそれぞれ違っていてもベクトルは同じ方向に向いていることを強く感じ、それが印象的でした。また、先が見えない不安を抱えながらとにかく動いていかなければならない状況なのだという思いはみなさんから聞かれ、そういった面もなるべく記事としてまとめ、ホームページにアップし公表していくことに努めました。インタビュー時に録画した映像は許可をもらい動画ポータルサイトYou Tubeに投稿しました。映像を閲覧していただいた全国の方や海外の方がコメントを残してくださり、関心を持っていただいていること、メッセージが伝わっていることがわかり、それが私たちの行っているアーカイブ活動に対する目に見える反響だと感じました。

 震災からこの一年間、各地で様々な復興イベントが催されました。大船渡市・陸前高田市でも多数のイベントが開催され、私たちも地域の方々と一緒にイベントに参加しました。なかでも被災した東北沿岸部の各ポイントの町で花火を打ち上げることで東北の未来を明るく、元気に、をコンセプトとして811日に三陸町越喜来地区で開催されたLIGHT UP NIPPONというイベントは、事前に実行委員長と副実行委員長の方々にお話しを聞きに行き、イベントを越喜来地区で行うに至った経緯や抱えている問題点、本番にかける思いなどをお話ししていただきました。その内容を記事にまとめホームページにアップし、イベント当日の様子も記事にまとめホームページにアップすることで事前・当日と一つのイベントに密着したリポートを作成することができました。また、参加者がチームに分かれタブレット端末を使用し、メディアの報道からは知ることのできない被災地の姿を映像に収め短編映画を制作する、シニア・中学生を対象としたワークショップにも参加し、私たちもチームの一員としてともに制作に携わりました。その様子も含め私たちが感じたことなど感想も記事としてアップしています。こういった各自イベントの記事をまとめる際には、なるべくイベントの趣旨が伝わるような書き方をすること、写真を添えてその場の雰囲気を伝えようとすることを意識して取り組みました。

 震災から約半年ほど経過したあたりから次第に営業を再開し始める店舗、仮設店舗で営業する店舗が増え始めたこともあり、大船渡市・陸前高田市・住田町を含めた気仙地域のマップをeコミマップベースに制作し始めました。制作当初はボランティアの方々や支援団体の方々に役立てていただけるよう飲食店や病院、宿泊施設を中心に情報をマップ上に落としていました。時間が経過するにつれ、多種多様なジャンルの店舗が営業を開始し始めたことから地元の方が生活するうえでも役立ててほしいという思いになり、外部から支援に来てくださる方々と気仙地域に暮らす方々の双方が役立てられるマップ、という方向性で進めていくことに決めました。マップのタイトルを「つながりマップ」とし、マップをご覧になっていただくことでまず作成者である私たちとつながり、マップ上の店舗や施設の情報をご覧になっていただいてそこに足を運びたいと思っていただく、また実際に足を運んでくださることで店舗やそこにいる人々とつながるマップという意味合いを持たせました。マップでは避難場所の情報も網羅しており、もしこの場所にいたらどこの避難場所が一番近くて安全か、という情報も見て取ることができます。そういった面でも災害時、人々を避難場所へつなげられるマップということも言えると思います。

以上で述べたつながりマップの「つながり」をより有効化するため、KOMのホームページと連動させ、マップ上の情報も店舗名や営業時間だけでなく、店舗によっては写真や店主・スタッフの方々へインタビューした動画も一緒に登録しました。現在は新たに完成した店舗や今まで登録していなかった店舗・施設の情報を探し、写真付きで登録していくというようなマップの完成度を上げていく作業を行っています。私たちが現在作業をしている復興地図センターで提供しているマップにもつながりマップの情報は使用しており、地域の方々の生活に役立てられていることを実感しています。

 他の活動としては、陸前高田市の思い出の品回収・返却に関する作業、気仙地域(遠野地域も含む)の観光スポット(伝承地や景勝地、遺跡など)の紹介、シンポジウム、防災フェアへの参加などを行いました。

 私たちも被災地に住む被災者であり、活動していくうえで動きにくさを感じる場面も多々ありました。陸前高田市の思い出の品の回収・返却作業では、街へ行きがれきの中から思い出の品をピックアップし、泥やカビを落としきれいに洗浄した後、保管施設内へ運び入れ整理していく工程を行いましたが、集まってくるものがよく目にしていた部活用品、カバンやランドセル、卒業証書、記念写真など、ほとんどが地元で生活していた人々のものであり、個人的にはそれを活動の一環として行うことに対して複雑な心境のなか活動したことを覚えています。また活動当初、私たちがメディアから受ける取材に困惑したこともあり、避難所にいる方や地域の方々にお話しを聞くということを躊躇った時期もありました。そのようなこともあり、活動当初から、自分たちですべきことを考え積極的にそれを実行していくようにと言われていましたが、何をしてそれをどうしていきたいのか、すべきことがあることは理解していてもどうしても私たちが踏み込めないこともある、というようにどう動いていけばよいのかわからなくなった時期もあり、まったくと言っていいほど活動にならなかった日もありました。

 5月から始まった約10か月間のアーカイブ活動、私たちKOMとしての活動すべてはKOMのホームページに記録しています。KOMのホームページがアーカイブです。私たちのアーカイブ活動に携わってくださった関係者、地域の方々、協力、サポートしていただいたすべての方々のお力添えがあってこその活動でした。決して私たち4人の力では成し得なかったことを十分に理解し感謝しています。私はこれからも今までのような業務としてではなくなるにしても自分なりにアーカイブ活動を続けていくつもりです。そして10か月間の活動で出会った方々との絆や経験を被災地の復興、いずれ起こりうるとされている震災の復興支援などに活かしていきたいと考えています。



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